はじめて

 

ぱたん

扉が閉まった音に日向は慌てて顔をあげた。

シャワーを浴びた若島津がまだ少し濡れている髪を拭きながら、寝室に入ってきた。

 

「日向?」

いつもと変わらぬ穏やかな表情で、ベッドの端に座っている自分の顔を覗き込んでくる。

この人、本当にわかってんのかな?それともさっきのは単にからかわれただけ?

俺はこんなに心臓がバクバクいってんのに。

日向の隣に座りにすわったかと思うと、膝に頭を預けてくる。

「ひゅうが・・・」

気のせい?少し甘えた声で名前を呼ぶ。

キスして・・・

瞳がそう言っているような気がした。

 

 

何度か唇をついばむようにくちづける。柔らかい彼を確かめるように。

そしてゆるく開かれた口内に舌を挿しいれると深く重ねる。

「・・・ん・・・あ・・・っ・・・」

何度も角度や深さを変えてくちづける。合わせた唇の隙間から唾液とともに吐息が漏れる。

名残惜しげに唇を甘く噛んだ後に離れ見つめると、瞳と唇が濡れている彼に捕らわれる。

ヌレタヒトミ

白い肌

ヌレタクチビル

赤く染まった頬

 

 

 

「げっ・・・・・・」

「?」

急に眉間にしわをよせ、つぶやいた日向に、若島津は心配そうに顔を近づけてきた。

「た、タンマッ。」

それ以上色っぽいカオを近づけないでくれ〜(涙)!

日向はそりゃもう一生懸命自分自身と戦った。

センセイと付き合い始めてから数あるお誘いを全て断って、ここしばらくえっちしてなかったから?いくらなんでも早すぎる。

「もう限界なんだよ!」

「は?」

「あんたの表情見てるだけで、もうイキそうなんだよ!!」

キスだけでイキそうになるなんて・・・。

ハジメテの時でさえ、こんなみっともないことにはならなかったぞ。おい。

あー、穴があったら、マジはいりてえよ。

自己嫌悪やらなんやらでセンセイのカオを見れなかった。

 

 

 

かわいいなあ。

ここで笑ったら、きっとすごく怒るだろうなあ、と思いながらも、あまりのかわいらしさについ口が綻ぶ。

 

 

「もしかして、ドーテイ?」

日向はあわてて首を横に振った。音がしそうなくらい激しく早くブンブンと。

来るもの拒まずのちょっとだらしない女性経験の数は普通の同年齢の倍以上はある。

プロのお姉さまともあったっけ。

 

確かに布越しにもわかるほど、日向の中心は硬くなっていた。

「なんで?イッちゃえばいいじゃん。それって俺に感じてくれてるってことだろ?

 恥ずかしがることないよ。俺はすげー嬉しいけどな。」

 

 

じゃあ、俺に任せて・・・

自分の好きなセンセイの白い指が自分の中心を柔らかく握りこんでくる。

清潔な白い手が自分の欲望に絡みつくさまを目にすると

「・・・っ・・・・・・」

たまらない。

日向は情けなくもすぐにイッてしまった。

 

 

 

「ひゅうが?」

壁のほうを向いて不貞寝を決め込んでしまった彼を背中から緩く抱きしめる。

「もう、したくなくなった?」

「まさか。そんなはずないだろっ!」

誘い言葉をかけると慌ててこっちを向いてくる。その必死の表情がかわいくてにっこり笑うと、また日向は不貞腐れる。

「センセイが想ってるより、ずっと俺のほうがセンセイのこと、好きだよ。セックスだってしたくてしたくてたまらない。でも、嫌われるんじゃないかとか、満足させられなかったらどうしようとか思うと、どうしたらいいのかわからなくなる。」

怒ったような表情のままそう言う彼の一生懸命さが好きだなと思う。大人になるにつれて無くしてしまった『相手を純粋に想う気持ち』を持っている彼は、自分にもそのキラキラと輝いている純粋さを分け与えてくれているようだ。

「俺だって、日向が好きだよ。セックスもしたいと思ってる。たぶん日向に負けないくらいに。」

そう言って服を脱ぎ、日向を押し倒した。慌てている日向にキスの雨を降らす。

激しくて甘いキスの雨。

若島津の「好き」の気持ちが皮膚を通して染み込んでくる。

日向はそんな若島津を抱きこみ、今度は自分が上になった。

少しだけ、余裕が出来た。センセイも自分と同じ気持ちだとわかったから。

ゆっくりと口付ける。唇を何度も舌先で触れるとくすぐったそうに笑った。舌をしのばせるとすぐに絡んできて深いキスへと変わっていく。

手を頬から首、肩と滑り落ち、なだらかな胸を撫ぜた。胸の突起に触れると一瞬身体を硬くしたけれどすぐに力を抜いて両手を日向の頸の後ろにまわしてくる。

キスの合間に漏れる泣いているかのように聞こえる吐息がたまらない。

今度は唇で触れた。

もっともっと声が聞きたい。今まで知らなかったいろんな表情が見てみたい。

眉根を寄せて耐えるような顔をしながらも、自分の今の気持ちを伝えようと若島津は声を押さえようとはしなかった。

「ひゅ・・・が、す・・・き・・・」

切れ切れに伝えてくる想いに益々自分の中の炎が燃える気がする。

その炎は頭の中までも真っ赤に染めてしまい、もう何も考えることが出来なくなってしまった。

 

 

 

気がつくと隣でぐったりと若島津が寝ている。

「センセイ?」

「も、だめ・・・」

身体に残る甘い脱力感にどうやら自分は無事に若島津とセックスを終えたことを知った。それもどうやら2〜3度ではないようだ。あまりにも無我夢中でそのときのことを覚えていない。

「もったいない・・・」

せっかくのセックスの記憶がないなんて。

でも、絡んだ腕の強さや唇の甘さ、触れた肌のなめらかさは自分の身体が覚えている。

 

今度は、もし『今度』が許されるなら、もっと思い遣れるセックスをしたい。まだまだ心に余裕のない自分には難しいかもしれないけれど。

今はせめて、この寝顔を守りたい。

寝顔が満ち足りて幸せそうに見えるのは気のせいじゃないはず。

 

 

もぞもぞと若島津の横にもぐりこみ、小指を絡ませる。

ゆびきりげんまん。これからもずっとずっとセンセイだけを好きでいる。

ずっとずっと離れない。

 

 

 

 

                            おわり

 

 

 

 

なんだか中途半端な感じなんですがとりあえずハッピーエンドかな?

時間がなくてえっちを逃げてしまいました。ごめんなさい。

以前書いていたものと今回書いたものでなにやら文章の雰囲気が違うかも。

ひさしぶりに主導権を握る若島津を書いたので。

校医シリーズも無事えっちを終えることが出来て一区切りついた感じかな〜と思っています。

 

今までどうもありがとうございました。